一万円分のCDを持つ少年

中学生のころは CD が流行っていた。

これは90年代で J-POP シーンがとてもアツく、とにかく CD が売れていたからだと思う。

Febb というラッパーがとあるインタビューで、親から1万円をくすねて、渋谷のタワーレコードに行くとアルバムを4枚買うことができるから、そこでどうチョイスするかが最高に楽しかった、と言っていた。

この感覚はすごくわかる。

当時アルバム1枚は3000円ぐらいして、輸入盤だと2000円や2500円とかだったような気もする。

とまぁ、こんな CD 時代だけあって、流行りの CD を持っていることは中学生にとってはひじょうに重要だった。

カウントダウン TV に流れた曲や、オリコン、ミュージックステーションなど、とにかくみんなが知っている曲の CD を持っているのは重要で、みんながそれを持っている人に群がっていた。

そこから少し抜けると、いかに他の人が持っていない CD を持っているかが重要になってくるのだが、それはまた別の話だ。

CD で一番手っ取り早いのがシングルを買うことだった。

アルバムを買うなら、そうとうそのアーティストが好きでないと買わなかった。

安室奈美恵や TRF や尾崎豊や BOOWY などはみんなアルバムで買っていた。

そんな中、あまり裕福ではない感じがしたとある友達が、いつも1万円分のシングル CD を持ち歩いていて、1万円分なので、つまり10枚だ。

アルバムではなく、シングルで10枚持っている人はめちゃくちゃリスペクトしていた。

そんな彼が常に持っていたのは、

  • 中島みゆき -「浅い眠り」
  • 稲垣潤一 -「クリスマスキャロルの頃には」

だった。

これ以外に何を8枚持っていたのか忘れてしまったが、この2枚は彼の激推でぼくも未だに好きな曲だ。

中でも中島みゆきの「浅い眠り」はむちゃくちゃ好きな曲として未だに忘れられない。

しかもこの曲は YouTube にも iTunes にも原曲が存在しないレア曲だ。

中島みゆきバージョンの「浅い眠り」はどこに行けば聴けるのだろうか。

彼の家にはまだ「浅い眠り」はあるのだろうか。

そうだ、彼の名前は 工藤 くんだ。

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